吹替コラム

吹替愛好家としてのスタンス

後でアンフェアにならないようにここで明記しておきます。私は吹替原理主義者、声優原理主義者、フィックス原理主義者です!

映画館に行ってもソフトを借りても必ず吹替版を選びます。吹替版を上映出来ない洋画は見ませんし、お金を払ってまで字幕版を選ぶ気はありません!吹替でないと洋画を見た気にならないのです。ただし、例外としてソフトを購入した場合は吹替で観た後に興味本位で字幕版を見る事もあります。私は俳優本人の声を蔑視している訳ではなく、“おまけ”として自分の中では大いに楽しんでいるつもりです。

タレント吹替のみのソフトは一部の例外を除いて買いませんし、タレント吹替の映画は見に行きません!しかし、楽しみにしていた映画に、タレントが吹き替えると後から発表された場合はしぶしぶながら例外としますが、普段はなるべく回避します。さらに声優の成り立ちについても調べた上で、「声優という職業は無い」「声優業は役者の仕事の一部」という考えにも反対です。声優が舞台俳優から始まった事を知った今でも、(ちゃんと演技が出来る事は前提ではあるものの)声優はプロの仕事と考えています。ただし、日本人俳優はなるべく本人に吹き替えて頂くのがベストと考えております。

フィックスとは英語で「固定」という意味で、吹替においては一人の俳優をどの作品でも一人の声優に吹き替えさせる事です。まあ「ダイ・ハード4.0」のような例もありますので無理に一人に絞らずとも二・三人、多くとも数人までなら文句はありませんが、あまりにも多人数に吹き替えさせるのはとても許容出来ません。アニメ作品やナレーションでの声の出演ももちろんフィックスであるに越した事は無いと信じますが、あまりにもイメージが違いすぎてどうしてもフィックスの方では合わない場合に別の方を起用する事に関しては否定しません。

ついでに言うと、アンチ戸田奈津子、アンチジブリでもあります。さらに私の思想が偏りの無い完全に公平なものかというとそうでもないし、自分が納得出来ない事は絶対にしないし、所詮私は理想論・綺麗事・性善説が三度の飯より好きな理想主義者です。こんな私ですが、これからよろしくお願い致します!

Creeの奇妙な愛情―または私は如何にして字幕で見るのを止めて吹替を愛するようになったか

私が初めて見た日本語吹替版は「アラジン」でした。その後もアニメ・実写を問わず、見るのは必ず吹替版。そうしている内に「洋画というものは外国人が日本人の声で話す映画の事である」という絶対的な基準が私の脳に深く深く刻み込まれていきました。よく「外国人が日本語を話すのは不自然ではないか」という意見がありますが、私には逆で「外国人が母国語を本人の声で話す映画」の方にどうしても違和感があるのです。すり込みとは本当に不思議なものです。

次の転換点は「トイ・ストーリー」でした。公開時は存在を知らなかったのですが当時から大変な人気で、その日レンタルビデオ店に残っていたのは字幕スーパー版のみ。仕方無しにそれを借りましたが、感想は「最悪」の一言でした。分からない国の言葉で話すキャラクターと画面下にちょくちょく出る日本語の文章。当時の私の目には字幕版は“只々意味不明で理解不能なもの”としか映らなかったのです。翌週になって、吹替版が借りられたのでリベンジの気持ちで見てみるとあら不思議。あれほどつまらなく感じた映画が非常に面白いものになっていたのです!私が吹替版に固執するようになったのはその時からです。

それから洋画劇場を見始め、さらにレンタルビデオでも様々な吹替洋画を観るようになっていきました。次に注目したのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作、吹替愛好家としてこの映画は重要な位置付けです。なぜなら、私が吹替のバージョン違いを最初に知った作品だからです。見たのはもう十年以上も前、図書館でたまたま小説版の三部作を見つけて読み(それ故に結末までの全てのネタを見る前から知っていました。)映画も見たいと思っていた所、その週の金曜ロードショーでPart1が放送されると知り、これ幸いとばかりに録画しつつ見た所大変気に入ったのでした。その後放送されたPart2と3も録画し、本当に面白い映画に出会えた事を喜んでいました。そして時は流れ…ある日、近所のレンタルビデオ店で何の気なしに置いてあったPart3のVHSの声優欄を見た所…マーティ:山寺宏一、ドク:青野武と書いてありました。

え?

「おはスタ」や「ちびまる子ちゃん」で二人の声は耳に馴染んでいます。録画し、親しんできたビデオの声とは全くの別人です。帰宅した後、慌ててビデオを早送りし最後の声優クレジットを確認します。…マーティ:三ツ矢雄二、ドク:穂積隆信と書かれていました。どういう事だ?ビデオとテレビでは声優が違うのか?それまで安穏と映画を楽しんでいた私が、吹替に対して初めて感じた疑問でした。それから自分なりに少しずつ調べていき、ビデオとテレビでは声優が違う事、台本によって台詞も変わる事、テレビ放送時は放送枠に合わせてカットがある事等々を知っていったのです。思えばあの時から、私は吹替愛好家になる事を運命付けられていたのかも知れません。

その後はテレビでT1やT2を見て気に入り、続編の「ターミネーター3」も小説版を読んで面白そうだと思ったので見に行く事にしました。当時はタレント吹替に危機感を抱く前だったのでDA PUMPのISSA氏が吹替に参加している事は気に留めていませんでした。この頃にはすっかりテレビの洋画劇場の常連になり、特にシュワちゃんの映画をよく見るようになっていました。声優が代わる場合もあるという事は知っていたので、「ターミネーター3」ではいつも通り玄田哲章さんになるかどうか心配でした。シーンが進んでターミネーターが登場し、ついに口を開きます…。

「その服を脱げ。」

おお、ちゃんとあの声だ!良かった〜!安堵すると共に一つの疑問が頭に浮かびました。何でこんな当たり前の事にびくびくしなきゃいけないんだ?数ヵ月後、結末はともかく面白い所も多々あったのでDVDを買ったのですが、吹替がISSA氏から石母田史朗さんに交代しているのを知ってこう思いました。有名な人だと何かまずいって事なのかな?これがタレント吹替とフィックス声優に興味を持った最初でした。それから調べてみると、山のようにタレント吹替のデメリットを唱える人達のお話を読む事が出来ました。ここから長い時間を掛けて、私はタレント吹替に反対する気持ちを着実に固めていったのです。

それから何年も経った頃、羽賀研二さんと唐沢寿明さんが声優ではない事を知りました。今から考えれば何とも皮肉な事です。このサイトで声優原理主義を宣言したはずの私が、タレント吹替を否定し続けてきた私が…タレント吹替で吹替派になっていたとは!アイデンティティーが崩壊してもおかしくない、この大々的な矛盾に対して長い間考えてきました。結果としてそれでもタレント吹替を諸手を挙げて認める訳にはいきませんが、吹替派としての自分を育ててくれた彼らの吹替に強い思い入れがある事も事実です。それ故に“既に作られたものにはある程度寛容に接するが、これ以上タレント吹替を乱造する事だけは決して肯定しない”という結論に達しました。

数年後、WOWOWでのインディ・ジョーンズ一挙放送ですっかり村井国夫さんのインディの虜になっていた所に、新作「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」が公開されると知りました。しかし、長い間吹替の声優陣が発表にならなかったので、「吹替が村井さんなら見に行こう。違う人ならやめよう。」と決めていました。結局、インディの吹替は村井さんのスケジュールの都合で内田直哉さんに決定と聞かされ、即刻中止を決断。ソフトに村井国夫さんの吹替も入れて欲しいというアンケートにも参加しましたが、結果は変わらず。「スター・ウォーズ」新三部作でのC-3POの声優変更の悪夢がまざまざと蘇ってきたのです。この事がある種のトラウマとなり、声優の続投に神経を尖らせる原因となったのです。

さらに数年後、「アイアンマン」を観た私は「アベンジャーズ」というクロスオーバー映画が公開されると知り、早くも楽しみにしていました。配給がパラマウントからディズニーに変わった事も知っていましたが、「まともな分別のある会社ならタレント吹替だとしても初登場のキャラにするだろう、それが常識だ。」と楽観的に考えていました。しかし、その信頼は見事に裏切られました。タレント吹替にするために佐古真弓さんと手塚秀彰さんが、最初から吹き替えてきたにも関わらず降板させられたのです。しかし、周囲の人々は同じ吹替ファンでさえもほとんど話題にしていませんでした。私は愕然としましたが、同時に生まれ持った反骨精神が湧き上がって来るのを感じました。

誰もやらないなら私がやってやる!

という訳でホームページを作って同じような考えの人々の声を集め、配給会社に届けようと考えたのです。もちろんホームページの製作などやった事はありません。それからは大変な道のりでした。血眼になってホームページの作り方を探し求め、必死になって慣れないコードを組み…苦労して入力した内容が全て吹っ飛んだ事もありました。
そして2012年7月7日、日本語吹替版発案サイト「Cree Get Requests!」を開設、今に到ります。

わたしのかんがえたさいきょうのようがでぃーぶいでぃー

と言っても何の事は無く、単に洋画のDVDはこのような仕様が理想かなあというだけの与太話です。

・本編ディスク
ディレクターズ・カット版と劇場公開版のW収録
デジタルリストア版
音声:
 オリジナル英語5.1chサラウンド
 英語5.1ch DTS
 日本語吹替5.1chサラウンド(ソフト版、原語に忠実な翻訳)
 日本語吹替モノラル(追加収録されたテレビ版、テレビ用の翻訳)
 音声解説
字幕:
 日本語
 英語
 音声解説用字幕
 日本語吹替用字幕

・特典ディスク
メイキング
ビハインド・ザ・シーン
未公開シーン集(解説付き)
オリジナル劇場予告編集&テレビCM集
日本版劇場予告編集&テレビCM集
NG集
ミュージック・ビデオ
スティル・ギャラリー

・封入特典
解説ブックレット
復刻版ミニパンフレット
復刻版ミニ映画チラシ

豪華デジパック仕様
上記全てを収納可能なアウターケース付属

追加収録の是非

テレビ版吹替をソフト収録すると、カットがあった場合にはその部分はオリジナル音声+日本語字幕になる事が大半となります。そこでソフトによってはカットされた部分を追加収録している場合があります。「放送時間に合わせて編集した上で吹き替えているから追録すべきではない」という意見も見かけた事がありますが、私は出来れば追録して欲しいと考えています。昔の作品では声優さんにも経年による声質の変化がありますが、前向きに考えると放送時にどこをカットしたかが分かるというマニアックな楽しみ方が出来ます。そんな楽しみ方をするのは私ぐらいだと思いますがwただ、どうしても無理ならスキップ機能でもいいかも知れませんね。

アニメ声優の吹替進出

若手のアニメ声優が吹替をすると「アニメと吹替では求められる技術が違うので、アニメ声優にやらせるべきではない」という意見を見かけますが、タレント吹替について、人によっては「上手ければいい」という考え方もありますが、私はアニメ声優の吹替こそ上手ければいいと考えています。現在もたまに若手のアニメ声優が吹替に出ていますが、下手だったり合わない演技をしていると感じた事はありません。私がすぐに思い出せる限りでは「エンジェル・ウォーズ」「キャリー(2013)」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」辺りのアニメ声優は上手かったと思います。

 「声優は歌手をやるな」が間違っている理由

私は“餅は餅屋”という考えの人間なので、声優ではない俳優・芸人・スポーツ選手等々タレントとしての知名度を利用した話題作りの起用には反対です。しかし、こんな事を言うと「じゃあ声優も歌手をやるなよ」と誤った反論をされる場合があります。今回はこの理屈がなぜ間違っているのかを説明していきたいと思います。

配役というものにはパイがあり、まるで椅子取りゲームのような状態ですが、CDの場合は話が違います。CDというものはそもそも売れる見込みがあるから制作するものであり、人によっては歌手の曲も声優の曲も両方買う場合もあり得ますので、両者は並べて語る事が出来ないと考えています。という訳で「タレントが声優をやると声優の仕事が減るが、声優がCDを出しても歌手の仕事は減らない」という理論が成立します。

ここでさらに「歌手にとっての仕事は歌番組もある。声優が歌手をやると歌番組の枠が減ってしまう。」という反論があるかも知れません。しかし、声優の歌番組への出演は今でもNHKやBSが中心のように思えます。民放の地上波となるとまだまだ人気歌手やアイドルグループの地位は安泰ではないでしょうか。これで先の意見が言いがかりに過ぎない事が分かって頂けたと思います。

声優もただでさえ立場が弱いのに、多彩な活動をしないと生き残れません。声優に詳しい友人によると、最近の声優には歌唱力も求められているそうです。ここまで説明すれば、なぜ「声優は歌手をやるな」という理屈が間違っているのかが多少は明確になった事でしょう。声優の皆さんにはこれからも演技に歌に頑張って頂きたいと思います。

究極の理想:複数吹替収録の洋画ソフト

私の究極の理想は、日本語吹替音声が複数収録されたソフトが普及する事です。昔はテレビ局ごとに吹替を作っていたので、ビデオ版吹替が普及した90年代以降はテレビ放送で気に入った映画をソフトで購入すると吹替が違ってがっかり。という事が度々ありました。

なので、「吹替を複数収録したDVDやブルーレイ」の普及が必要と考えています。2007年前後には「ミスター・ノーボディ」や「ダイ・ハード4.0」のDVDで二種類の吹替が実現し、2012年以降は20世紀FOX「吹替の帝王」、ワーナー「吹替の力」、ソニー「吹替洋画劇場」など吹替に力を入れたレーベルの登場で以前と比べて状況はかなり改善されてきました。

このようなニッチな製品を発売するには素材の有無・容量の限界・権利関係・予算など様々な困難が予想されますが、今後も吹替に優しい方々を出来る限り応援していきたいと思います。

なぜワーナーの吹き替えはレベルが高いのか? byノックスビル大佐さん

注意:正式に膝を突き合わせて行ったインタビューなどではなく、イベントの時にたまたまお話しする機会があったワーナーさんの社員さんと軽く立ち話した程度ですし、その方は吹き替え部署の方というわけではないことをご承知ください。(ノックスビル大佐さん)

近年のワーナー作品は非常に吹き替えのキャスティングが良い!FOXやディズニーなどと違って素人タレントを安易にキャスティングしたりはしない。
インターステラー、ホビット、オールユーニードイズキル、ダークナイト、パシフィックリムなどを見ればわかる通り、真剣勝負の豪華声優陣で劇場公開してくれる傾向がある。
 昨日ワーナーBrosジャパンの社員さんと話す機会があったので、
「ワーナーさんの作品はいつも吹き替えのクオリティが高いですよね。洋画ファンとして本当に感謝しています。やはり安易なタレント起用などに頼らずファンに良心的な豪華吹き替えを制作してくれるのは御社の方針なんですか?」と聞いてみたところ、
 「タレント起用は一応広報活動になるんでしょうが、そもそもタレント起用で宣伝できる客層は洋画の顧客セグメントと異なるんです。アイドルやお笑いが好きな方と洋画に興味を持つ層はそもそも異なるんです。なので、洋画や声優さんに関心がある層に効果的にアプローチする方がソフト販売まで視野に入れると有効だと考えております。知識豊富な洋画ファンをないがしろにするような政策は長期的成長やコレクター向けのソフト販売に繋がらないんですよ。」との回答が。

なるほど、わかってらっしゃる。マーベル作品もワーナーに配給してほしかった(笑)
これからもジュピター、マッドマックス、バットマンVSスーパーマンなどが控えているワーナーの吹き替えに期待したい。

子役の吹替・叫び声の吹替・第三外国語の吹替について

今回は三連発で記事を書きたいと思います。

吹替について考える際には出演しているのが声優かそうでないかという問題がありますが、子役についてはどう考えるか難しい所です。私は下手に有名な子役を起用して宣伝に利用すれば即座にタレント吹替扱いする事にしています。子役を起用するならば、「ハリー・ポッター」シリーズのように子役が子役を吹き替えるのが理想的かも知れません。

最近の吹替では叫び声までちゃんと吹き替えてあるのは少なくなったような気がします。叫び声は効果音扱いになるという説も聞いた事がありますが、私としては俳優の口から発せられている訳なので、やはり叫び声も吹き替えて頂きたいと思います。

例えばアメリカ映画の場合、スペイン語などの第三外国語は吹替でも字幕で処理され、日本語吹替の声優がその原語を話すというなかなか手間のかかる事をしていますが、テレビ版吹替の追加収録のように途中であまり字幕に切り替わらないのは重要、という考えには賛成です。なので、吹き替える事で展開に支障や矛盾が出るならまだしも、そうでなければなるべく吹き替えるべきではないかと考えます。

故人に声が似ている声優

私の独断で故人の声優に声が似ていると思う声優さんをまとめてみました。

小池朝雄、石田太郎→銀河万丈
山田康雄→多田野曜平
野沢那智、中村秀利→木下浩之
納谷悟朗→関智一
大塚周夫→大塚明夫
鈴置洋孝→成田剣
内海賢二→石井康嗣
滝口順平→茶風林

という訳で、このサイトで追加収録などの希望をする際は、場合により代役としてこの方達を挙げる事になります。

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